塚本香央里(つかもとかおり)
 ~ヴァイオリニスト&ライフオーガナイザー~
 

ブログ

ブログ
2026/07/04
185「道・視察旅行⑨」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

娘たちは二人とも演奏している楽器はヴァイオリンです。

結果的に家族のなかでヴァイオリン弾きが3人になったわけですが、そうさせたかったわけではありません。

長女にはヴァイオリンを弾けるようになったら良いかなぁ・・という気持ちはありました。どちらかと言えば不器用な長女はヴァイオリンに関しては続けることは難しいと思って、他のことに目を向けるように誘導したこともありました。ヨットに興味を持って毎週江の島へ出かける生活をしましたし、乗馬も好きで馬との交流を楽しんでいました。毎年恒例の家族スキーは、一番性に合っていたらしく、もう少し近くにスキー場があったらインストラクターにでもなっていたのではないかと思います。次女は長女のレッスンに付き合うために、半ば強制的にヴァイオリンを始めたような感じでした。そのうちに、水泳に目覚めて競泳選手になるほど泳ぐことが好きになりました。なんでも比較的上手くこなすことができるけれど、苦手意識があったり興味がないことは無理に追及することはありませんでした。乗馬は馬が大きすぎて怖がっていましたし、スキーもなかなかキレイなフォームで滑れるのにそれほどの熱情はもちませんでした。

ヴァイオリンを続けることに関しては本人に任せました。

 

私の唯一つの希望は、音楽だけに盲目的になるのは避けたかったことです。

人生において、様々な選択肢を提示したいと思っていました。

ヴァイオリンを弾くことだけに固執するのではなく、自分の持っている他の可能性も探求してもらいたい・・・

幸いなことに二人とも頭脳明晰で、多少のデコボコは有れど、考えを深めていくという作業は幼いころから訓練していました。

 

二人とも経済的な自立を目指しています。

ヴァイオリンだけを上手に弾いていればお金が稼げるわけではない。

これからの時代は、ひとつの技術に専門知識を持ったうえで、他の技術を掛け合わせ、それらをパラレルに活用していく能力が必要とされる気がします。音楽だけしか知らない、だから生活能力は重要視されない、という昔気質の音楽家は生きていけなくなると思っています。

二人とも演奏技術の向上の努力は常に必須としても、その先にあるビジネスチャンスをしっかりと見据えています。その素地は、ビジネスマンだった夫の影響が大きいと思います。世の中の構造、資本主義の中で生きていくこととはどういうことか、自分の周りで起きている経済活動などの話は、幼稚園頃から話して聞かせていました。今では二人とも世界情勢や金融についての最新情報に敏感に反応するまでになっています。

私が同じような年齢の時にはボヤ~っと何となく毎日を過ごしていたなぁ・・・と恥ずかしくなるくらいです。

様々な人とのコミュニケーションを通して自分の意見を主張して交渉する、知識や経験を通して自分を表現していくことが積み重なって、最終的に自分のやりたいことが実現していく。その過程を彼女たちは身をもって、それも海外で経験を積んでいます。日本にそのまま暮らしていたら気づけなかったことはたくさんあったでしょう。

海外生活は過酷です。

思っているよりも大変です。

「なぜわざわざ海外に行く必要があるのか?」「デジタルの発達した現代で、困難極まる海外生活を強いるのは愚行では?」といったことを考えないではなかったです。ただ、はるか昔に自分がドイツ留学を決めた理由が「無意識を意識する」ということだったことを思い出しました。日本にいたらわからない感覚を、ドイツで磨いてみたい・・・と思った20代の自分。人間的な幅を広げたいと思ったあの時の自分を、娘たちに少しだけ重ね合わせることで理解できるような気がしました。

 

これからの道、彼女たちはどのように過ごしていくのでしょうか?

私が提示し続けた選択肢はもう役目を終えました。

その先に拡がる人生は自分で選択し、自分で折り合いをつけていかなければならないでしょう。

 

そのスタート地点(もしくは助走期間)を見ることのできた今回の視察旅行は、私にもとても意味のあるものになりました。

そしてなにより私自身、自分の行く先を見つめるヒントがふとした瞬間にありました。

そのお話はまたいつか。


2026/07/03
184「それぞれの道・視察旅行⑧」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

この3年間は娘たちも私も無我夢中で過ごしてきたような気がします。とにかく流されないで歯を食いしばりながら、無理に笑顔を作って必死に生きてきました。何があっても平気な顔をして、心で号泣しながら泥道をかき分けていくような。娘たちには涙を流すことを忘れさせてしまったような気もします。その先になにがあるのか全くわからず、生きていることだけを考え続けた日々。果たしてそれが良かったのかどうか、わかりません。その先に現れた今が本当に良いのかどうかもわかりません。

ただ、この旅の意味は、とにかくここまで辿り着いた次女の頑張りを大いに認めることでした。次女自身はもちろんのこと、それを見守った長女も私も、自分の事のように褒めたたえることが必要でした。

そして、画面越しで話を聞いていても、その場にいなければわからなかった見えない部分の感情や、伝わらなかった、伝えることのできなかった細かいディテール部分の話を、いまだから話せることとして、改めて時系列で聞き取りをすることが、今の私の役目かもしれません。

娘たちの生活する町を歩きながら、ひとつひとつ壁にぶつかりながら歩き続けた3年間の積み重ねを改めて思い返しました。自分の留学時代とは全く違う、今の時代の生き方や生活様式。この先の将来への道の進め方にも、それぞれの深い視点のビジョンがあることを心に刻みました。

1年後・・・どうなっているのか楽しみです。

2026/07/02
183「視点を変える・視察旅行⑦」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

以前ヨーロッパに暮らしていたからこそ、日本との違いを感じることができるのは、視点の変換という普段の生活ではできないことが浮き彫りになります。今回の旅ではちょっと意識して観察してみることにしました。私個人の主観なので、間違っているかもしれないということをお断りしておきます。


海外でよく見かける老夫婦の姿。手をつないでお互いに寄りかかりあいながら歩いている姿は、今も昔も変わらなかったです。羨ましいなぁ、と思いつつ、私たち夫婦が彼らの年齢で同じようにしていたかどうか・・・きっと違う形で二人で過ごしていたかもしれない、とも思いました。ヨロヨロと歩く老人をあまり見かけることはなく、一人で行動している老婦人や老紳士も多く見かけました。なんとなく、年代別に集う場所も分かれているような気もしました。子どもの声が良く聞こえて、元気な泣き声やしゃべっている声があふれていました。電車を降りるときにベビーカーを当然のように手伝う人がいて、店舗に入るときのドアは老若男女問わず後ろの人を気にして抑えて待ち、「ありがとう」と声を掛け合うことが自然でした。

街中ではどちらかといえば一人で行動している老婦人を多くみかけました。美術館の受付で、チケットを購入しながら見どころを訪ねていた老婦人。おしゃれをして地下鉄に乗っていた上品な婦人。レストランで楽しそうに二人でお茶を楽しむ老婦人ふたり。ワーキングウーマンたちが、スーパーの巻き寿司をテイクアウトしてレマン湖畔でおしゃべりしながらお昼を過ごしている姿はオシャレでした。(美味しいかどうか?それはわかりません)

自分のモデルになるような女性を探していたかもしれません。


窓口でどんなに長く時間がかかっても、だれもイラついた態度をとることなく辛抱強く待っている人たち。お互いの時間を尊重して、面倒がらず、邪険にすることなく、時間を最大限に使って相手に向かっていく姿が印象的でした。わからないことはちゃんと聞く。私もswiss passを購入するのに、確認を怠らず、少しの疑問点も質問しましたが、嫌な顔をすることなく辛抱強く説明してもらえました。たとえ私の英語がハチャメチャであろうとも・・・美術館のチケット販売では3つある展示会の全てを細かく説明してもらって、どのチケットを購入したら良いのかまでアドバイスをもらいました。逆に、ホテルのシャトルバスが夕方の時間帯だけ運行されていないことを知らなくて、ずっと待っていたことがありました。チェックインの時に「一日中運航しているよ」と言われて確認しなかった自分のせいなのですが、たしかに受付の人は夜間担当だったので日中のことは担当外だったのかもしれません。

「こちらの人は、自分の担当することは責任をもって細かく教えてくれるけれど、一旦担当外になると雑だよ。でもね、それでいいと思う。担当外のことまで知るべきなんて、責任が大きすぎて負いきれないからね。」と次女がサラリと言ったときには「ほんと、その通りだ」と納得しました。日本にいるとついつい担当外のことまで知っていなければならないと思って、荷重が大きくなり、結局自分の担当のところもあやふやで中途半端になってしまうことが多いのは経験済みです。担当の場所に責任を持つことの重要さを改めて学びました。


時間の流れがゆっくり感じられるのは、空間が広いということだったり、人との適切な距離だったり、教会という存在があったりすることかもしれないなぁと思いました。


2026/07/01
182「3人で会う・視察旅行⑥」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

13日間の滞在中に、数時間だけ3人で過ごすことができました。

ドイツに住む長女のところへ次女が電車を乗り継いで会いに来てくれたのです。目的はドイツへの引越しを控えた次女が、荷物を預けに長女の家に来ることでしたが、その時期を私の滞在時期に合わせてくれました。日本以外の場所で、しかも3人で会うというのは、本当に奇跡的なこと!長女の家は次女にとって、旅の中継地点。ヨーロッパ各地で開催されるマスターコースを受講したり、気になる先生のレッスンを受けたいと思ったときなどに利用している様子。簡易キッチンで長女に料理をふるまうのが宿泊代金のようなものらしい・・・。

・・・と次女がやってきて急に始まった姉妹の会話に全然ついていけず、しばしボンヤリしていると、「あぁ、これが親離れなんだなぁ」とポンと肩の荷が下りたような気がしました。私が必死にならなくても、この二人は協力することができる。それぞれの考えを展開していきながら、お互いの領域を侵すことなく自立していける。そんな風に思うことができました。そして、私自身も別の角度から自分の世界を創っていけばよい、と思えるような瞬間でした。

親子というのは難しい関係です。家族という一番身近な存在ではあるけれど、一人の人間としての領域があります。踏み込みすぎるとお互いが窮屈に感じて反発したくなる。でも、家族という温かい存在は、誰よりもいちばん理解できて安心できる存在です。親も年を重ねて子どもに頼ることも多くなります。子どもはいつまでも親の存在を意識します。

私自身は頼りになる二人に寄りかかりすぎることなく、支えあっていくことができる関係を、これから模索していきたいです。75歳くらいになったら、頼っても良いかな・・・


3人で繰り出した先は、トルコ料理のお店。

3人とも暑さでバテそうだったので、ガッツリお肉をいただきましょう!とガツガツいただきました。

ドイツ語や英語で店員さんと話す二人をみながら、すっかり良い気分になりました。




2026/06/30
181「姉妹それぞれ・視察旅行⑤」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

次女はこの3年間を大学学士過程に在籍していました。日本で音楽高校を卒業して、半年ほど引き続き大学の単位等履修生として在籍してからスイスへ留学しました。

長女は同じく3年前に日本の音大を卒業して、ドイツの音楽大学院に入学しました。

大学在籍と大学院在籍での違い、スイスとドイツという国の違い、生活様式の違いはそれぞれ大きかったです。さらに姉妹の性格の違いも影響していたように思えます。


☆大学と大学院:大学生はほぼ毎日授業があります。講義や実技はもちろんのこと、副科ピアノ、副科ヴィオラ、室内楽やオーケストラもしっかりと単位認定に含まれます。講義は全てフランス語。3年修了時には論文を書いてそれについての口頭試問までありました。最後に卒業リサイタルを開催してすべての単位を認定されると卒業できます。卒業式はひとりひとり名前を呼ばれて同級生からの歓声と共にディレクターから卒業証書を手渡されるというもの。

ドイツの大学院は、それぞれの大学によって違いがあるのですが、長女の大学院は取得義務のある講義が多かったようです。ドイツ語もかなりのレベルを求められて試験を受けなければなりませんでした。長女は室内楽メンバーとして声を掛けられることも多く、様々な編成の室内楽を渡り歩いていました。コミュニケーション能力が高いので、オーケストラのコンミスを担当した時も、合唱を含む大編成のオーケストラをメンバーと協力しながら率いていたことも印象的でした。現代音楽に興味を持っていることで広がったコミュニティも大きな強みになったようです。プロオケのMDR(中央ドイツ放送交響楽団)で短期就労の経験もして、盛沢山すぎる3年間を過ごしています。二人とも国や学校の奨学金制度に申請をして、経済多岐な負担減もさることながら、奨学金生の利点を生かした活動をしていました。堅実で真摯な姿だと思います。海外留学は華やかでお金のかかることばかりが目立って、肝心の勉強内容がおろそかになる傾向が見受けられますが、実際の留学生活は地味で質素で、心身健やかに過ごすことの大切さを実感する時間の方が多いような気がします。


☆スイスとドイツ:スイスはEU加盟国ではないので少し独立した雰囲気があります。生活の中でもスイス独自の方法や規律があるようです。小さい国ながら、様々な言語(仏・独・伊・英)を使えるという強みや誇りを感じます。次女には「私の住む地域はフランス語が主流だから、挨拶は必ずフランス語でね。その後は英語で話してもいいから」と言われました。その土地を尊重する気持ちは大切ですね。気持ちが引き締まりました。一方ドイツは懐かしさの大きい国ではありますが、30年前の状況とは大きく違い、都市(州)が変われば雰囲気も違い興味深かったです。思わず5月に読んでいた「自由     アンゲラ・メルケル」を思い出してしまいました。


147「自由・アンゲラ・メルケル」 こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。アンゲラ・メルケルドイツの第8代連邦首相。在任2005年11月から2021年12月。ドイツ史上初の女性首相。彼女の執筆した「自由(FREIHEIT)」を読了。上下巻約800ペー...
 

☆生活:スイスは物価が高いです。ヨーロッパの中でも特に物価高なのは生活水準も高いということになるのでしょうか。人々に余裕が見えるのはそのせいかもしれません。しかしその中で暮らす留学生は仕送りが中心とはいえ、本人の金銭感覚も問われることになります。物価の高い中で生活するには知恵が必要ですし、自分が何を優先するのかを見極める目と判断力が必要になってきます。コンビニなどは存在しないので、外食を減らしてお弁当を持参したり、自炊は必須。意外とかかる交通費なども、安価なルートを調べたりといったリサーチに余念がなかったです。ユーロ圏のドイツも大きな差はありませんが、やはり節約することの大切さは同じ。お互いの国の相場を姉妹で連絡を取りながら、生活用品の購入の相談をしていたようです。


「二人ともヨーロッパだったら安心ですね」と言われても、二人の都市は列車で7時間。決して近くはないので基本的にはそれぞれが自力で何とかしなければなりません。一人暮らし一年生の二人が、3年を経てしっかりと土台を固められたのは、実家暮らしで培った「感覚」だと思います。基本的なことは、実家の生活がすべてです。各自の軌道修正は必要だったでしょうが、私の思いから大きく逸れていないことに安堵しました。