塚本香央里 ~ヴァイオリニスト&ライフオーガナイザー~
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2025/09/17
260「音楽家が演奏とお話をするときに気をつけていること」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

以前は、音楽家は黙々と演奏することが仕事でした。
客電が消えて
舞台が明るくなると
演奏者が舞台へ現れ
淡々と音楽を奏でる姿を
聴衆はひたすら食い入るように見つめているだけでした。
それは、当たり前のこと。
普通の事でした。

私がドイツへ留学した時に
曲目解説をしながら演奏するスタイルに初めて出会い
衝撃を受けました。
(そもそも、入学試験の時に
自分の演奏する曲目を目の前にいる教授たちに言わなければならず
しどろもどろで話した記憶があります。
それは、言語能力を測るためでもあったのですが・・・)

私が一番記憶にあるのは
クララ・シューマン(ロベルト・シューマンの妻)の作品を紹介するコンサート。
ピアニストの女性が
ピアノ曲・ヴァイオリン曲・室内楽曲を紹介しながら演奏するスタイルは
さながら大学の講義のようなコンサートでした。
聴衆もとても興味深く聞き入り
演奏後はピアニストに質問する人たちでいっぱいになり
「さすがドイツ人だわ」と感心したものです。

私がレクチャーコンサートをしてみようと思ったきっかけは
まさにそのコンサートで
帰国してすぐに真似をして始めました。
約30年前の事です。

ただ、話す労力と演奏する労力は全く違います。
話に夢中になると
息が上がってしまって演奏に集中できない。
演奏に集中すると
話すことを忘れてしまう・・・
毎回、試行錯誤の連続でした。

それが今では、演奏者が話をするのは当たり前の時代。
その魅力のために、コンサートに足を運ぶお客様が増えたことも確かです。

ただ・・・
私が気をつけている唯一の事は
お客様の一歩先を行くこと。
プロとして演奏するならば
ひとつでもプロらしい視点からのお話を
持ち帰っていただきたいということです。

曲目や作曲家、その時代の出来事や背景は
調べれば誰でも情報を得ることができます。

そのうえで
私たち音楽家が実際に演奏して感じたこと
共感・違和感・疑問などを
自分の言葉で語れるようにしたいと思っています。


言葉は大切。





2025/09/16
259「留学報告会・開催」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

長女が1年ぶりに一時帰国をしています。
本来であれば、3月に予定されていた計画だったのですが
事情で計画を変更。
フライトも
「9月だったら、きっと、大丈夫だろう」
という予測での変更でした。

目まぐるしい予定をこなしながら
一時帰国を楽しみにしている様子ながらも
6月ころに
「ホームコンサートを開催したい」
という希望を伝えてきました。
2年間の留学期間で得たことの大きさ
コンテンポラリー作品への充実した勉強と実績
生活・精神面などのことを
アウトプットしながら
少し整理してみたいとのことでした。

  • 9月初め
  • 30分のコンサート+海外音大生の日常や生活について聞くお茶会(2時間)
  • 限定5~7名
コンサートの企画運営に関しては
私よりも経験豊富な長女がサクサクと決めていきました。

私の役割は
タイムキーパーとスムースに進行させること。

当日のお客様は5名。
どの方も、長女を心から応援している大切な方々。

短いあいさつの後で
コンテンポラリー作品を
曲目解説しながら2曲演奏。
その後は、お客様と演奏方法や作品についての話をして
楽器を身近に見てもらいました。
場所を移動して
お茶を飲みながら
生活の話・思考の話・これからの展望の話をして2時間終了。

ひとつの区切りを大切にすることは
次への着実なステップになります。
こういった報告会を開催することで
自分の思考を整理することができ
言葉によって
改めて自分自身の方向も定まったのではないかと思います。

2年間の音楽修行生活は平たんではありませんでした。
理不尽な思いをしたことも
悔しい思いをしたことも少なくはありません。
ただ、それだけで終わらずに
小さなチャンスをつかみ取って
大きな実に育てることも
新しいご縁に繋げることも
地道な努力で続けてきました。

その姿を見守ってくださっている方に
今回の催しは
一番の御礼になったのではないかと思います。











2025/09/15
258「お月見の季節・閑話休題」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

コンサートを終えた後は
少し余裕が欲しくなります。
本番にむかって緊張していた心と身体を
少しだけ柔らかくしたいものです。

9月も半ばになりました。
この時期の和菓子屋さんは
工夫をこらした「お月見○○」のお披露目が盛んです。

今年の中秋の名月は10月6日。
(満月ではありません)
旧暦8月15日の十五夜に月見をする習わしの事とのこと。
太陽暦に基づいて決まるので、毎年違う日になるそうです。

そんなことを
「ふむふむ・・・」と調べながら
お月見だいふくを食べる幸せ。





2025/09/14
257「リハーサル方法は多様化する」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

まだまだ暑い日々。
近頃は湿気が高くて本当に蒸し暑い日々です。
さすがに頑丈な私も、暑さの疲れでヒーヒーしています。

さて、今回の奏楽堂でのコンサートの準備で
気をつけたことを書いていきたいと思います。
「賛助出演」というお役目をいただいてのコンサートだったので
少なからず責任をもって演奏することは必須でした。
さらに、30年以上続くピアノグループとしては初めての室内楽演奏。
聴きにいらっしゃるお客様も、きっと興味をもって楽しみにされていることでしょう。
自分の練習はもちろんのこと、共演者のピアニストもしっかり準備していかなくてはなりません。

奏楽堂のホールはなかなか難しい響きだったなぁ、と過去の演奏会を思い出しながら
どんな状況・ピアノの状態・音響でも演奏を楽しめることが大事だと思いました。
そのために、我が家のアップライトピアノでのリハーサルを大幅に減らして
練習スタジオを借りて、色々なグランドピアノで弾いてみることにしました。
(さらに今回は、ホール練習もできたのでとても助かりました)
今まで馴染みのなかった練習スタジオ。
探せば色々とあるのですね。
リハーサルは我が家で・・・というのが当たり前だった時代は過ぎました。
状況に応じて、スタジオを探して
グランドピアノでリハーサルをして、音響を確認することの大切さを改めて思いました。

ピアニストも、様々なピアノでのリハーサルを重ねたおかげで
本番のピアノにも反応が早かったように思います。

試行錯誤はいつまでも続く。
演奏することに、小さなこだわりを持って
常に高みを目指したい、と思うこの頃です。







2025/09/13
256「奏楽堂でのコンサート・終演」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

9月になるとコンサートシーズンを迎えます。
私にとって、これからの季節は身の引き締まる日々です。
昨日は「MuBe'88 ベートーヴェンの夕べ」コンサートでした。
お足元悪い中、お越しいただいたお客様に感謝申し上げます。

今週になって急にやってくるゲリラ豪雨にビクビクしながら本番を迎えました。
お天気は曇り。
いつ雨が降り出してもおかしくないような空模様でした。
湿度が高く、少し動くと汗ばむような気候。

久しぶりの夜公演のため
カンを取り戻すのに一苦労でした。
(いつ、何をどのくらい食べるか?というのが結構重要だったりします)
さらに、ジョイントコンサートのため
出演者が多いのも難しいシチュエーション。
(いつ着替える?自分に集中するにはどこが静か?など)

湿気を気にしながら準備していましたが
ピアノのコンディションはもっと大変そうでした。
なにしろ、演奏者によってタッチも音量も全く違うので
調整に気を遣います。
演奏者それぞれの椅子の高さを入念にチェックして
ピアノの音に耳を澄まします。
今回は歌・ピアノソロ・ヴァイオリンとの二重奏と編成も違うので
会場への音の届き方も千差万別。

ヴァイオリン族の私は
とにかく自分の楽器に集中して準備を進めました。

共演者の川元真里さんとは
様々なコンサートでご一緒しているので
最後は「お互い全力で楽しむ!」ということで
35分間を弾き切りました。

重要文化財の「奏楽堂」は
懐が大きく、さすがの風格に助けられました。
西洋音楽の黎明期を生きた音楽家たちの息吹を感じて
演奏中はとても豊かな気持ちになりました。
彼らから続く、日本人音楽家の末裔として
少しでもその舞台に音を刻むことができた幸せ。

何度か演奏しているホールですが
今回は特に「歴史」という時の流れを感じるひと時でした。

お客様にとっては
階段が多くて難儀だったり
古い建物なので、廊下等が暗いことなど
普段のコンサートホールとは違った面もありますが
みなさん「来てよかった」「雰囲気がすてき」と
とても好評でした。

まずは御礼まで。




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