こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。
新書の魅力に開眼した今夏。
様々な知識を安価で手に入れることのできる新書は
私の心強い味方になったような気がします。
読書強化月間に
書店で思わず手に取った新書。
『ピアニストは「ファンサ」の原点か』スターとファンの誕生史
かげはら史帆(河出新書)
かげはら史帆氏の「ベートーヴェン捏造」を読んで
「おもしろい!」と思った著者の新刊。
『推し活』全盛の今の時代
ファンとはいつから誕生したのか?を
めぐって時代を遡り
ピアニスト・リストの風刺画をもとに
謎解きをしていくという解説書。
音楽家としては見過ごすことのできない内容だった。
人気というものは
自然発生ではなく
人工的に(または作為的に)作られるものである。
その方法は、本人ではなく
周りの思惑によって築かれるものが多かった。
フランツ・リストの場合
◎ライバルをあてがわれる
◎恋愛相手によってブランディングしてもらう
◎ビジュアルを最大限に活かす
◎顔芸・しぐさで聴衆を魅了する
◎コンサートの密室化(サロン)による個別化 など
綿密に仕組まれていた様子。
ただ本人は、地道なテクニック練習を積み重ねて
自分の技術で勝負したかった模様。
【なんだかわからないけれど、有名だから聞きに行く】というよりも
本物を届けたかった音楽家の信念が見え隠れする。
私には、音楽家の弱点でもある
「うまく言葉で表現できない」
「セルフコントロールできない芸術家」を
最大限に利用されたのではないか・・・と訝しく思う(深読みすぎ・・)
現代の音楽家はしたたかで
自分でもセルフブランディングをして
確実に「ファン」を増やす努力をしている。
古き時代のように
「お抱え音楽家」を雇うような文化が無くなってしまったから
自力で自分のファンを増やさなければ
活動をしていくのは至難の業。
音楽家だって
霞を食べて生きているわけではない。
毎日のパン代金を稼ぐべく
必死にファンを増やしている。
クラシック音楽愛好家が求める演奏家の姿は
ファン層を広げたい音楽家自身と
思惑が違っているかもしれない・・・
今の時代
音楽家のあり方は転換期を迎えているのかもしれない・・・と
大きな視点で見ると
自分の音楽家としての姿勢はどうするべきか?と
大きな問いかけをされている気がする。
ファンからみた視点。
音楽家から見た視点。
読みながら、あちらこちらへとフラフラしながら読了。