「本物に迫る」
私はヴァイオリン演奏から「本物」を届けたいと思っています。
でも、「本物」ってなんでしょう?
私が思っている音楽家の場合で読み解いてみましょう。そして、今回の場合はリサイタルに限ってのシチュエーションで考えてみます。
演奏技術に問題がない:基本的なことですが、聴衆が不安なく聴くことができる状態が前提になります。
そのうえで、しっかりと裏付けのある曲目解釈による演奏に、演奏者の独自な解釈が表現されていることが大切だと思っています。
私はリサイタルのプログラムを決めるときに、大きなテーマを決めます。それは漠然とした概念だったり、言葉だったり、感情だったりしますが、「今回はこんな風に自分を演出しよう」と思いながら準備に入ります。1年間の自分を表現することになるので、難しく感じることもありますが、リサイタルを弾き終える頃にはすでに次のテーマを思い浮かべながら演奏しています。そのテーマに沿って弾きたい曲を考え、時間配分、自分の力量等を整えていきます。大きなテーマから外れないように注意しつつも、ちょっとこじつけることもあります・・・
そして、最後に聴衆に何を持ち帰ってもらいたいのかを考えます。私自身が心の奥底で思っている芯の部分を感じ取ってもらうにはどうしたら良いのかを。そこが「本物」ということだと思っています。演奏者の心の芯の部分から発せられるエネルギー。その熱烈なエネルギーを受け取ってほしいという願いが演奏に反映できるかどうかが、演奏者の本気→本物につながっていくのだと思います。
私には、演奏者の意図まで感じ取ることができるような聴衆の耳を育てていきたいという野望があります。演奏者のエネルギーを感じ取って、演奏者から「本物」を受け取ること。そこで感じたすべての感覚を、あらためて日常生活のなかで反芻してもらいたいです。何を感じたのか、何に心の琴線が触れたのか。そして、自分の気持ちに気がついてほしいと思っています。今、自分が何を思って生きているのか。