塚本香央里 ~ヴァイオリニスト&ライフオーガナイザー~
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2025/03/12
71「雨の日に思い出す曲」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。



雨の日に思い出す曲

ブラームス
ヴァイオリンソナタ第1番
「雨の歌」作品78



外を駆け回るのが好きだった幼少時代。
雨の日が苦手でした。
アイロンかけをする母の横で
庭の水たまりを眺めながら
「雨はいつ止むの?」と
しつこく聞いていたことを思い出します。

実家の庭は私が駆け回ることによって
芝生が剥げて土がむき出しのところがたくさんありました。
雨が降ると、くぼみに水たまりができます。
その水たまりに、雨しずくの模様ができます。
雨足によって
水たまりが静かだったり
賑やかだったり。
飽きもせず、ずっと眺めていました。
そしてその先に見えてくる
お友だちがリカちゃん人形で遊んでいる姿を
羨ましく思ったものです。
リカちゃん人形を持っていない私は
雨の日はいつも仲間外れ。
それでもふてくされることなく
雨の庭を見ていたのはどうしてなのか?

私の母は、私が欲しいと思っているオモチャを
買ってくれることはなく
家にあるもので代用する知恵を教えてくれました。
ミルクのみ人形がほしいけれど、いつものぬいぐるみで代用。
お人形にかけてあげるお布団は手縫いで作ってくれる。
お世話してあげる哺乳瓶がほしいけれど、ソースの空き容器で代用。
(この思い出は強烈で、未だにソースの容器を見ると
反射的に匂いをかいであの頃のことを思い出してしまう。
良い思い出なのか複雑だけど、嫌な思い出ではない)
その当時の母は、子育てをちゃんとしなきゃ、と思っていたらしく
子どもを甘やかしてはいけないと頑張っていた、ということを
後になって知ったけれど、
私にとっては悪いことではなくて
どうかすれば、自分の娘たちにも同じことをしていました。

私が初めてブラームスの「雨の歌」を弾いたとき
あの、小さい私が見ていた庭の水たまりと
友だちに会えなくて寂しい気持ちと
母と二人だけで過ごす
静かな時間が
ザザッとよみがえりました。
私の来ている洋服、窓辺、視線、色彩。
母がアイロンをかけている様子、部屋の空気。
空の色、軒からおちる雨だれ、水たまりの様子。
細かいディテールまで想像することができました。
その時初めて
「あぁ、私の音楽ってここに在ったんだ」と
ホッとした思いに包まれました。
それまで練習していた曲たちが
ずっと繋がってここまで連れてきてくれたこと。
音楽を表現するということを
しっかり教えてくれた曲が
この「雨の歌」でした。

私が見ていた雨は
きっと今日のような雨だったに違いないです。


今はなくなってしまった実家の庭。
記憶の中に残っているから
演奏することによって
それらが蘇る。
私は、それらを伝えたいと思います。





2025/03/11
70「3.11記憶」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

14年前の今日。
まだまだ子育てに忙しい時期で
それでもヴァイオリンを弾くことを
必死に続けていた頃でした。
その頃は月一回、聖路加国際病院のトイスラーホールで開かれる
ボランティア演奏者によるお昼のコンサートに参加していました。
演奏する機会が多くなかったので
このコンサートに参加させてもらえることは
とても貴重な時間でした。
月一回のおでかけは、
長女は学校の放課後キッズで遊べるし
次女は延長保育でお友だちや先生と遊べるから
私も少し羽を伸ばしてお茶を飲んだり
買い物を楽しんだりしていました。

あの日も自分の出番を終えて、
少し早くコンサートを抜け出しました。
いつも、自分の時間を少しでも満喫するために
銀座に寄って、娘の洋服を買ったり
本を買ったりするのですが
その日はなんとなく「早く帰らなきゃ」と焦る気持ちがあり
いつもより早い時間に帰路につきました。
電車の中からふと空を見ると
不安になるような見たことのない雲の色で
心がざわざわしたことを鮮明に覚えています。

帰宅して手を洗い
洗面所のある2階から階段を降りるときに
ガタガタと
尋常ではない揺れがはじまり
あわててダイニングテーブルの下に入ったところで
夫からの連絡が携帯にかかってきました。
「今切ったらもう繋がらなくなるから」と言われ
テレビをつけてニュースを見ながら
お互いの状況を伝えあいました。

その後、私は娘たちのことが気になるので
「これから娘たちを迎えに行ってくる」と
電話を切ったとたんに幼稚園から連絡が入りました。
「あぁ、よかった。お迎えに来られますか?」

その後
バタバタと準備をしていると
近所のママさんが
「大丈夫?」と言いながら
外を走りながらご近所さんの安否確認をしていました。

私はとにかく娘たちを迎えに行かなければ、と
小学校と幼稚園へ向かい
無事に合流して自宅へ帰りました。

あの日からの混乱は
それまで経験したことのないものでいっぱいでした。
さまざまな情報が錯綜して
どんな風に状況を咀嚼すればよいかもわからない。
不安しか感じられない時間でした。




あれから14年。

あの時のことを
忘れないことが
私にできることです。

音楽家として私にできること。
静かに
祈りとともに
音を紡いでいきたいと思っています。







2025/03/10
69「楽器の調整は感覚を研ぎ澄ませて」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

今日は楽器職人さんの工房へ行ってきました。
今年の冬はどうにも乾燥が尋常ではなく
音がガサガサしてきました。
私のヴァイオリンは長く生きているので
(270歳以上?)
ちょっとのことでは驚かないし
かなり胆の据わった楽器なので
不調を訴えてくることも少なく
頼りになる相棒なのですが
さすがにこの乾燥は可哀そうだな、と。
それでも
「がんばって~」と
騙し騙し弾いていたのですが
先週後半くらいから
私の耳が嫌がるくらい気になってきたので
思い切って楽器職人さんの予約をとりました。

乾燥するとどんな音になるのか?
これは感覚ですし
人それぞれの印象なので
明白な基準があるわけではないのですが
とにかく
「耳元でこの音をずっと聞いていられないかも」と
思うことでしょうか。

自分の音が嫌いな時は以下のような感じ。
  • 練習不足で音程が合わなさ過ぎて嫌気がさす
  • 外的要因(乾燥・湿気)などでうまく鳴らない
  • 楽器自身が謀反を起こしていて練習をボイコットしている(そんなことあるの~?と思われるでしょうが、たまにあります。まぁ、私が真面目に練習しないから、しっかり音を出し切らないから、という要因が一番大きいと思うのですが・・・)
今回の場合は2番目の要因ですね。

楽器も生きているので、その時によって鳴っている音が違います。
何年も一緒に弾いていると、楽器個別の性格があったりするので
面白いです。
(因みに娘たちの楽器もそれぞれの個性があり
二人とも楽器に振り回されながら、または振り回しながら
試行錯誤の日々です。
二人とも若い楽器なので、演奏者と対立が多いのかも?)

楽器職人さんに
「乾燥が原因だと思うのですが、音がガサガサしているんです」
と伝えると、ササっと楽器を弾いて
「あぁ、なんだか取っ散らかっている感じですね」と。

私の言葉をちゃんと聞いてもらえて
意思が伝わるのはなんと素晴らしいことか。

私の伝え方は、そんなに専門的ではないです。
とにかく感覚を伝えるだけ。
「なんだかしっくりこない」
「ガサガサ」「のっぺらぼう」
「ジャリジャリ」「バランスが悪い」
とりあえず自分の感覚に合う言葉を
ドンドン伝えて
自分がどんな音を欲しているのかを
一生懸命伝えます。
楽器職人さんは
「フムフム」と聞きながら
「わかりました(なんとなく)」という感じです。

弓の毛替えもお願いして数時間後。
きれいにしてもらった楽器に再会して
試奏してチェックして。

自分で一生懸命伝えたことが
ちゃんと音に反映されていると
ホッとします。

楽器は自分でメンテナンスできるところが限られているので
細かいチェックは楽器職人さんにお願いします。
ミリ単位以下の調整で音がガラリと変わることもあります。

今回は我慢しなくてよかったなぁ、と
本当にホッとしました。

(そのため、他の作業が渋滞中になってしまいましたが、
それは自己責任ということで・・・)





2025/03/09
68「難しい言葉は音読で」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

日本語なのにわからない・・・

専門用語、書類関係の言葉遣いには
なかなか苦労することが多いですね。
役所の書類関係では
申請書・届出書・申告書。
保険関係では
約款や契約書。
頭を抱えて「無理!」とあきらめることも
時間の節約になって良かったりします。
餅は餅屋に・・・と専門家に任せることも大切です。

私は気が短くて
諦めが早くて
投げ出すのが得意なのですが
今回は逃げ出さないで
ちょっと頑張ってみようとやってみました。

結論は、
「なんとか自分でもできるらしい」という
新たな発見をしたことです。

一番役に立ったことは
「声に出して読んでみること」

わからない文章を
ひとつひとつ声に出して
「音読」してみることは
案外役に立つことなんですね。

ひとつひとつ読み上げながら
手順を確認したり
指さし確認しながら
「これとこれを合計して~」
「ここに転記して~」と

自分で声に出して
自分の耳で聞きながら

作業していくことの大切さを感じました。

これ
一人だからできることで
家族がいたら
ちょっとアヤシイですね。

でも、こそこそと
独り言をつぶやくのも
悪いことではないと思っています。

すっかり書類作業に時間を取られて
音楽に向き合う時間が激減してしまいました。
両極端の作業を
バランスよく配合するのは
さすがの私も難しいです。

気を取り直して
頑張っていきたいものです。








2025/03/08
67「学び」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

地域での活動をしています。
そのおかげで様々な講演会を聞きに行くことができます。
著名な講演者だったり
通常であれば聞けないディープな内容の講演だったり
得ることが多いので
時間に余裕があれば聞きに行っています。
ただ、初めのころに比べると
自分自身の講演の聴き方に変化が出てきました。

初めのころは
知識を得るための受講生という姿勢。
そのうち、
講座内容の感想をアウトプットすることを自分に課して
今は
講師の方のレジュメのつくり方と
話の誘導のしかたを学んでいます・・・
(話の内容はどこいった???)

どんな状況でも
様々な学び方があることを
この2年で教えてもらえる機会がたくさんありました。

苦手すぎて
見ないふりをしてきたデジタル機器の操作や
オンラインに関すること。
生活の中では
オンライン決済や
オンラインでのフライトチケットや宿泊施設の予約
タクシーを呼ぶのも以前は全くできませんでした。
ひとつずつ
本当に少しずつ積み上げてきました。

知らないことはたくさんあるけれど
ひとつずつ
「わかる」ことを増やしていけば
大丈夫
・・・と
自分に言い聞かせています。

学びは一生できること。




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