塚本香央里 ~ヴァイオリニスト&ライフオーガナイザー~
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2025/02/10
41「いろいろなコンサート」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

自分の演奏で心に残るコンサートというのがいくつかあります。
若かった時のヒリヒリするような緊張感のあるコンサート。
体調が悪くて辛かったコンサート。
ちょっとクセの強いコンサート。
今日は、日本酒の醸造所でのコンサート。
クセ強めの思い出です。

梅雨の時期ではあるものの
七夕コンサート(7月7日)に出演してほしいと言われて
楽しみに伺った醸造所。
ほぼ野外的な会場だったので
ピアニストと相談して
音が遠くまで響くように調整。
(アップライトピアノの鍵盤下の板を外して
音が大きく鳴るようにしました)
ヴァイオリンは演奏する場所で変化するため
お客様の入りを見て本番中に探るようにしました。
リハーサルをしていると、客席の準備が進んでいきます。

ビール瓶ケースをさかさまにして、
その上に座布団をのっけて
客席の出来上がり。
その数300くらい。
ふと目線を上げると大きな投光器。
その横に屋外用大型扇風機も用意されています。
「こんなに人が集まるのかしら?」
と思いつつも、本番時間が迫ってきたら
続々と近所の方がいらっしゃいました。
毎年楽しみにされているお客様。
醸造所のお得意さんもたくさんいらっしゃるようです。

梅雨時期特有の湿気と
お客様の体温で
会場の熱気は始まる前からムンムン。
毎年開催されるので
お客様も慣れた様子で、みなさん笑顔。
舞台としてつくられた場所も
そう頑丈ではないので演奏するたびに少し揺れます。
演奏の熱気とともに
お客様の前のめりな姿勢にも熱を帯びてきます。
ピアニストも楽しく演奏で会話してきます。
しかし暑い・・・
尋常ではない汗をかきながら
とにかく弾きまくる。
ふとみると、投光器のとなりの大型扇風機が回っています。
でも、全然風が届かない・・・
暑いよ~・・・

演奏後は3㌔くらい痩せたような気分でした。
あんなに汗をかいたコンサートは
後にも先にもあの時くらいでしょうか。
喜んでいただけて何よりでしたが
とにかく汗でドレスはヨレヨレ。
メイクも汗で流れ去り・・・

「楽しかった!」「よかったわ!」というお声をいただき
日本酒と奈良漬をいただいて
帰り道は抜け殻のようでした。


ここだけの話。
演奏途中に大量の汗でヌーブラが落ちそうになって焦り
演奏後に舞台袖の控室近くにあった洗面所に
ヌーブラを投げ捨てて
アンコールは
ノーブラで弾いたという・・・
「もう、笑いが止まらなくて困ったわよ~」と
ピアニストにあきれられた楽しい思い出。




2025/02/09
40「音楽家は美味しいものが好き?」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

音楽家は美味しいものが好きです。
そういうと、ものすごく美食家で
横文字のフランス料理をスラスラと唱えて
ワインは有名な銘柄のものを注文し
器も凝って、気取って食べている・・・
そういうイメージを持たれるような(持たないような・・・?)


私自身は【おうち居酒屋】が大好きです。
たとえば・・・
週末の夕方17時頃から
柿の種とナッツを並べてビールを少し。
その後は1本1000前後だけどなかなか美味しいワインを
グラスに注いで夕食の準備。
クラッカーとチーズを食べすぎ注意!と用心しながら、
小松菜のお浸しができたらつまむ。
ロメインレタスにはレモン汁とマヨネーズとパルメザンチーズに
たっぷりとチューブニンニクとお醤油をちょろりと垂らして
なんちゃってシーザーサラダ。
安売りだったステーキ肉を年季の入ったWAGNERフライパンで焼いて
醤油と山葵のソースにつけて食べればメイン。
このあたりでお口直しにキリリと冷えた辛口の日本酒を少し。
腹具合が足りなければ炊きたてごはんと納豆をほくほく食べて完了。
場所を移して食後のデザートは
エスプレッソと奮発したリンツのダークチョコレートで充分。
後片付けをしながらウイスキーをちびりと飲んで
ごちそうの時間は22時ごろ終了。



春は菜の花のお浸しが最高。
夏になれば薬味たっぷりの冷ややっこ。
秋は我流の簡単ナスの煮びたし。
冬のメインは豆腐と豚の薄切り肉とネギいっぱいの鍋。

季節によって変化する食卓は
味覚をしっかり育てると思っています。
料理研究家ではないので
専門的なことは言えませんが
スーパーに並んでいる食材で充分に
季節を感じることができます。

我が家の娘たちは外食も好きだけれど
家のごはんも大好きで
長女は私の作るラザニアが好き。
別に大したことないレシピなのだが
きっと、良い思い出がたくさん詰まっているのだろう。
(誕生日にリクエストされる)
次女は「やっぱりごはんと納豆って最強よね」と
満々の笑みで食べている。

実家で食べた食事の記憶って
いつまでも残るものだから
私は私なりに食事は大切にしてきたつもりです。
忙しくてお惣菜に頼ったこともあるし
外食を楽しんだこともたくさんありましたが
友だち家族との集まりはお互いの家で
持ち寄り料理を楽しんだり
ママ友ランチも自宅でのんびり時間を気にしないで
一緒に食べたりしました。
そのどれも、気負ったものではなく
いつも自分で作り慣れているものが基本。

味覚の記憶が音楽に関係するの?

音楽って、全ての感覚を総動員して創るものだと思っています。
味覚も然り。

素朴な食材から高級品まで。
同じ食材を食べても異なる感覚。
その時の食事をした気持ちから記憶に残るもの。

私が亡き母と干し芋をストーブで温めながら
交わした会話は他愛のない学校での話だったかもしれないけれど
ほっこりした安心する記憶として私の中に残っていて
何かの拍子に音楽を再現するときにひょっこり顔を出す。

そんな風に
私のごはんも音楽も
娘たちや誰かの記憶に残ってもらえるといいなぁと
心から思っています。








2025/02/08
39「脳を休ませることの大切さ」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

時々、音に敏感になるときがあります。
町に出ると、様々な音があふれています。
電車に乗るときの発車ベル。
コンビニに入るときのドア付近。
デパート内に流れる音楽。

どうしても
無意識に何の音か探ってしまったり
知っている曲だと
テンポや楽器の編成が気になってしまったり
常に聞こえてくる音を追っている感じです。
ある種の職業病とでもいうのでしょうか。

音楽高校に入学してすぐに
音楽理論の先生から
「君たちはこれから無意識に音を聞くことはない。
どんな音も耳がキャッチして
曲の内容を分析をするようになるよ。」と言われて
それまで自分が楽しんでいた「ながら聴き」ができなくなるなんて
ありえない・・・と思ったものです。
その先生の予言は、かなり早い時期に本当のこととなりました。

その後は聞こえてくる音や音楽が気になって
友だちとのおしゃべりの内容を忘れることもあります。
娘たちとお茶を飲んでいて
ふと無言になってBGMに耳を傾けて
同時に
「この曲なんだっけ?」
「○○じゃない?」と
会話と関係のない話に続いていくこともあります。


先日、本屋さんに言ったとき
クラシック音楽が流れていて
本を選ぶより音楽に耳が囚われて
集中できなくて困りました。


私の場合は、少し気落ちしているときに
音に敏感になるようです。
神経が尖る・・・というのでしょうか。
拾わなくてもよい音を
わざわざ自分の頭に入れて
ああでもない
こうでもない、と
余計なことを考えてしまうことがあります。

つい最近
頭の中の音楽が邪魔で
睡眠まで侵食してくるようになって
どうしようかと思ったことがありました。

そこで、音楽ではなく自然の音を聞くのが良いかと思い
探してみるとたくさんありました。
鳥のさえずり、焚火の音、波の音、川のせせらぎ。
個人的に森の映像と鳥のさえずりを選んで
ぼんやりみているとだんだん神経が落ち着いてくるのを感じました。

デフォルトモードネットワーク

どこにも注意が向いていない
興味関心すらストップして
ぼんやりとしている状態。
脳を休ませるために
こういうことも必要なことなんだな、と
改めて思いました。

現実逃避にも役立つなぁ・・・と
余計なことも思ったりして。



2025/02/07
38「姉妹:私の場合」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

私には姉がいます。

5歳半(6学年)違うので

幼い頃はまるっきり相手にしてもらえませんでした。

喧嘩なんて、一方的に私が挑んでいるだけで

姉はずっと知らん顔してました。


勉強家で真面目。

時々ポロリと面白いことを言うけれど

周りの人が気がつかないこともあったりして

近くにいる人だけが笑っている。

運動神経もそこそこあって

直線を走るのはものすごく速いのに

障害物競走になると途端に

あれ?どこ行きました???・・・


両親も姉への信頼は絶大で

期待も大きかったです。

「お姉ちゃんなんだから」

「しっかり勉強しなさい」

今の時代ではNG表現のことを

当然のように言われていたな、と。

私の分まで怒られていることもありました・・・

(次女あるあるの要領の良さで)


姉は語学の才能があり

ドイツ語・英語は問題なく話せて

フランス語も「なんとなくわかる」らしいです。


独立心の強い姉は、17歳の時にドイツの音楽大学に入り

独り暮らしをしながら

生徒を教える音楽教室の先生にもなり

学士過程、修士課程を終えて

コンサートピアニストという称号を得ました。

もちろん、途中で体調を崩したり、

家族にとっては意味不明なこともしていました。

若さあるあるでしょうか。


だから、私たち姉妹が一緒に暮らした時間は

11年に満たないくらいのもの。

「ひとりっこ」が2人いるような感じでした。


彼女の得意とするのはピアノ教育。

演奏家として舞台に出るというより教育者として

生徒さんを指導することに喜びを感じていました。

日本に帰国してからも、指導者としての仕事中心でしたが

50代半ばで病気から失明し、盲目となりピアノを辞めました。

自宅からピアノを運び出す日

私も一緒にピアノを見送りました。

彼女の音楽家人生の終わりでした。

それからのち

白杖歩行訓練や点字練習、安全に生活をするための

新しい生活様式を学び

長く長く、苦しい時間を経て、

彼女は今、点字教室の指導をしています。

「やっぱり教えることが好きなの。

生徒さんにいろんな可能性を伝えることに燃えるのよ!

アレコレおせっかいなのよ、私」と話す姉はいつも生き生きしています。

↓姉のポッドキャスト


https://podcasts.apple.com/jp/podcast/%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85%E3%82%86%E3%82%8A%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%AE%E6%97%A5%E3%80%85/id1551338944


私自身の子どものころは

ヴァイオリンを弾くより

身体を動かしているほうが得意で

お勉強はまぁまぁ・・・

体育の成績だけはずば抜けて良くて

音楽高校を受験するときは

最後の最後まで悩みました。

体育大学に行った方がいいかも、って。

ヴァイオリンの練習だって

当時、2時間程度が限度のお粗末さ。

両親もため息をつきながら

「あなたは本当に体育が好きよね」と

半ば呆れるように

「ヴァイオリンはどうするの?」と言いつつ

目の奥は「仕方ないわね~」といった諦めが

透かして見えるような物言いでした。

それでも

体育の道を選択することはなく

ヴァイオリンを相棒にすることに決めて

弾き続けることにしたのです。

多分「これが私の道かな」と直感がささやいたから。

音楽の道に進んでからは

同学年の友人に刺激を受けて

勉強し

練習を重ねて

七転八倒しながら

頭をひねり

まだまだ

今もなお弾き続けています。

「やっぱりヴァイオリンを弾いているときが自分らしいかな」と思うから。

でも、いつ何かが起こってヴァイオリンが弾けなくなるかもしれません。

私は姉のように多才ではないので、そんなことになったら不安しかないですが・・・

そんなことになったらどうしよう・・・

(考えをやめよう)


姉との6学年差の大きさは

時に意地の張り合いになり

競争相手になり

価値観の違いをぶつけ合い

お互いに傷つくことが多かったものが

今では「同じ年代」となって

穏やかな関係になりました。

姉が私の存在を

「小さな何もできない妹」から

少しだけ認めてくれたからかもしれません。


個性が違い

目指すゴールが違い

生活スタイルも全く違う

私たち姉妹。

それでも何か

そこはかとなく

共通点があります。

それは根底に流れる家族の基盤なのか

同じ音楽家という道を経験しているからなのか・・・


月に1回程度

定期的に会う姉妹の会。

相変わらず私は「妹」という立場に甘えて

ヘラヘラしているけれど

それでも姉の盲目になった目の代わりに

外側から彼女の心の奥を覗いているつもりです。




2025/02/06
37「オクターブ練習に思うこと」  
こんにちは。ヴァイオリニストの塚本香央里(つかもとかおり)です。

今日は冷えました。
なかなか身体があたたまらず
ピアノの練習をしていたら
ショパンのエチュード第1番が
かなり弾けるようになりました。
素直に嬉しい・・・
(冷静に見れば現実逃避ともいえるが…)

私の自宅にあるピアノはヤマハのアップライトピアノ。
鍵盤一つの幅は約2.2㎝。
オクターブ(例えばドから7つ先のドまで)の距離が約18.8㎝。
(実際に弾く時は鍵盤に指が届いていれば良いので18㎝広げられればOKです)
私の中でピアノ弾きとは、オクターブが届くかどうか。
どれだけ余裕をもってオクターブが弾けるか?
オクターブの中に他の音も弾くことができるかどうか?
たいていのオクターブは親指と小指を広げて同時に弾くので
オクターブの幅を感覚で覚えていると
とてもラクに弾くことができます。
私の親指から小指まで19㎝ですが、オクターブを弾く時は18㎝で弾くことができます。
1㎝の余裕は大きいです。
鍵盤の幅が決まっているってステキ~!と思ってしまうヴァイオリン弾き。

私はヴァイオリンでオクターブを弾くのが苦手です(プロなのにそんなこと言っていいのか?)
なぜなら小指が短いので、オクターブが苦手なんです。
(ヴァイオリンは人差し指+小指、または人差し指+薬指でオクターブを弾く)
ヴァイオリンのオクターブの幅ってピアノのように㎝で表せることができないので
耳で聞きながら感覚で確認していきます。
場所によって音が出にくかったりするので
きっちりと合うまで忍耐力が必要です。
指を変えるフィンガーオクターブ(人差し指+薬指→中指+小指、交互に動かす)なんて
いつも涙目になりながら練習しています。
とても地味~な練習、そしてかなりハード・・・

手が冷たい時にこの練習をしてはいけません。
手の筋を痛めますよ。
充分に手を温めてから弾きましょう。
そして、長時間この練習をしないこと。
毎日、短時間で。

私も自分のルーティンはありますが
身体の変化とともに
練習方法も変化(進化)させなければなりませんね。
今年は時間をかけて、じっくり取り組みたいと思っています。


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